ヒトが「働くこと」をやめる時。

時代を読む 第140回 原田武夫

時代を読む 第140回 原田武夫

トランプ米大統領は2期目の就任前より、「今、アメリカをダメにしているのは左派だ。左派に牛耳られているのが民主党だ」と連呼してきた。直近には若き保守派のインフルエンサーの男性が射殺され、その犯人として「アンティファ(Antifa)」なる運動を指名、徹底した捜査活動が行われている。

「米民主党が左派?」と正直訝いぶかしがられる読者も多いかもしれない。実際、米民主党というとウォール街との関係や、グローバル・コンサルティングファームとの深い関係を思い浮かべやすく、どちらかというと「グローバル・デジタル金融資本主義」の先導者といったイメージを抱きやすいのではないだろうか。

しかし、あのオバマ元大統領や同政権の国務長官を務めたヒラリー・クリントンはそれぞれ学部学生であった時、どちらかというと「左派」寄りの活動をしていたことで知られているのである。無論、いわゆる「共産主義」「社会主義」の信奉者であったわけではない。しかし彼・彼女ら(現在はアメリカを代表する政治リーダーたち)は実のところ、世の中の矛盾、そして貧困・不公平について問題視をし、そこに社会正義を打ち立てようと政治を志したというのは本当の話なのである。

そしてまた、このことは何も「民主党」だけに限られない点にも注目しておかなければならない。政治を志す段階で、実のところ「共和党」のリーダーたちも同じような経歴をたどっている者が少なくない。その意味で、現代アメリカの一つの原動力がこうした心持ちであったと言っても過言ではないのである。

それではなぜこうしたアメリカの政治リーダーたちがその後、「左派」ではなく、むしろ「保守派」「右派」と親和性が高いと一般的にされる資本主義、もっと言えば金融資本主義を推し進める役割を担ってきたのであろうか。その理由は、結局のところ、社会正義を貫くためには技術的なイノベーションが必要であり、そしてそのために最も必要なのが「資本(capital)」なのだとある時気付いたことによるのだろうと私は考えている。

前述のヒラリー・クリントンがその典型であり、彼女は若き弁護士時代に投資で大もうけをしたと言われている。「資本」すなわちカネの力をまざまざと知れば、まずはゴール達成のために手段としてのカネを稼ぐべしということになってくる。同じような歩みをアメリカの政治リーダーたちはいずれも歩んできているというわけなのだ。

よくよく考えてみれば、かのマルクスが展開した議論=「史的唯物論」も、その根底には技術革新(イノベーション)が横たわっていたのである。すなわち技術革新が進み、生産手段が向上すれば、その分だけ余剰な富が生まれる。その分配を巡っての争いが結局は階級闘争を呼び、最後は「万人がその望みどおりに働き、望みどおりに欲しいものを得られる世の中」としての共産主義へとたどり着くというユートピア論がマルキシズムのエッセンスであった。

1 2
ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「Nileport」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。